斬新すぎる設定のミステリー小説『スタート!』
閉ざされた世界の中では非常識が常識になる。
『連続殺人鬼カエル男』というミステリー小説があります。
文字通りカエル男と呼ばれる殺人鬼の正体は何者なのか?という話なわけですが、その予想外の結末はかなりの衝撃です。
これはもちろんオススメなわけですが、今回は『スタート!』という同じ作者の小説の感想を書きます。
この話は、『連続殺人鬼カエル男』と同じ世界の話で、世界的映画監督である、大森宗俊が、
世間を賑わせたカエル男殺人事件をモチーフにした映画を撮ることが決まった、というところから物語が始まります。
主人公は大森監督の下で助監督を務める宮藤映一という人物ですが、その撮影中に次々と事件が勃発するというストーリーです。
この設定はかなり興味深いですね。
『連続殺人鬼カエル男』の登場人物を『スタート!』の登場人物である俳優や女優が演じて、
「この時犯人はこういう気持ちだったはずだ」とか
「刑事はこういう性格だったはずだ」
みたいな議論が展開されたりします。
そうだったけ?って感じで『連続殺人鬼カエル男』をもう1度読みたくなります。
また、映画の製作過程がかなり詳細に描写されているところも読みどころの一つです。
映画を製作するとき、どういうスタッフが必要で、どういうふうに撮影が進んでいくのか、とか、
口出しをしてくるスポンサーや、人権団体との攻防もあり、仮にミステリー要素がなくとも満足出来るくらいです。
映画でよく見る、○○製作委員会の意味もこの小説で初めて意味を知りました!
さて、これは作中の監督の言葉です
「一言で言えば素人が増えたんだよ。
素人評論家、素人人権家、それから素人監督。
昔は評論にしても相応の教養や経験がなければ名乗ることもできなかったが、
今は面白かった面白くなかったのと印象を書くだけで批評家面ができる。
そしてそういうやつに限って相対評価しかできないのに星を並べて絶対評価したがる。
そうやって採点すると自分が偉くなった気がするんだな。
挙句の果てには自分でブログを開設し、
タダ同然で借りてきたレンタルビデオの感想を書き散らして悦に入るのもいる。」
うわぁ、まんまこのブログやん‥
肝に銘じておきます。