この時期に、カミュの『ペスト』を読み返して思うこと
つまりこの瞬間から、恐怖と、それとともに反省とが始まったのである。
カミュの小説、『ペスト』は文字通り、
ペストが蔓延した都市での人々の戦いを描いた作品です。
この作品は、一般的には不条理に直面した人間の心理と、
神という存在についてがテーマと言われています。
今回、不要不急の外出を避けてつつ、何となく改めて読んでみました。
印象に残ったのは、序盤で、主人公の医師・リウーと知事やベテラン医師との会議の場面です。
初めは慎重というか、楽観的な見方をしていた知事らに対して、
リウーの必死の説得でようやく重大な予防措置を講ずることが決定されます。
「しかし、私としては、それがペストという流行病であることを、
皆さんが公に認めてくださることが必要です。」
「われわれがそれを認めなかったとしても」
と、リウーはいった。
「それは依然として市民の半数を死滅させる危険をもっています」
ここらへんは、今回のコロナでも、政府の対応が遅かったのではないかという批判もありましたが、
それと重なるような気もしました。
あと、やっぱり、現実主義のリウーと、神父のパヌルーとの対比です。
ペストは人間の罪ゆえであると説くパヌルーでしたが、
リウーとの会話や、罪のないはずの子どもの死を目の当たりにして、
考えが変わっていきます。
「確かに、あなたもまた人類の救済のために働いていられるのです」
リウーはしいてほほえもうとした。
「人類の救済なんて、大袈裟すぎる言葉ですよ、僕には。
僕はそんな大それたことは考えていません。
人間の健康ということが僕の関心の対象なんです。まず第一に健康です。」
さて、小説『ペスト』において、都市が封鎖されるなど緊急措置がとられたのが4月のこと。
そして、ペストが収束し、都市の門が解放されるのが翌年の2月。
今回のコロナはどうなるでしょう。
少しでも早いコロナの収束を願います。