鬱小説ナンバー1!!『ボトルネック』
漫画だと鬱漫画って1つのジャンルになりつつありますけど、小説でこの威力はあまり読んだことないや。
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。
文庫本裏の解説から引用。
ボトルネックとは、瓶の狭い口が、中身の出入りを窮屈にすることから、システムの支障となるものを指す言葉で、全体の向上のためには、ボトルネックは排除しなければならない、とされます。
主人公の嵯峨野リョウは、1年前に事故で死んだノゾミの弔いに東尋坊を訪れます。そこで突然意識を失うと、自分が存在せず、代わりにリョウの世界では死産となって生まれてくることはなかった「姉」がいるパラレルワールドへ。
一見同じに見えるその世界は、リョウの世界では険悪な関係になってしまった両親がうまくいっていたり、潰れてしまった店が潰れていなかったり、さらにノゾミも事故にあわず生きている。
その事実にリョウは絶望するわけですね。どうしようもなかったと諦めていた出来事が、自分ではなく姉のサキがいる世界では全てがうまくいっている。
ボトルネックは排除しなければならない
高校生で、どこか達観しているというか、客観視できるリョウだからこその絶望。
もとの世界に戻ってきた彼の前には、東尋坊の絶壁。後ろには自宅へと戻る真っ暗な道。リョウはどちらへ進むのか?というところで物語は了となります。
これ、サキと初めて会ってかみ合わない会話をする場面や、リョウの世界とサキの世界の間違い探しをする場面なんかは、非常にコミカルで面白いんですよね。
なので、その反面、自分がボトルネックなのでは、と考えた時の絶望感といったらないです。
主人公は最後どちらの道を選んだのか、自分ならどうするか、なんて考えると、読書感想文を書くのに向いてそう。
というしょうもない感想文でした。