20年前、世を震撼させた圧倒的衝撃作!!『恋愛中毒』
―どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。
他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。
表紙買いです。
結構前、同じ作者の『プラナリア』という小説は読んだことあったのですが、自分的にあまりハマらなかったので、
表紙が普通なら手に取ることはなかったでしょう。
物語は、編集プロダクションに転職した井口という男性が、その会社にパートとして働く水無月というおばちゃんの過去の話を聞く形で始まります。
その話は、作家やタレントである創路という男との恋愛です。といっても創路には妻がおり、愛人兼、秘書としての日々です。
水無月の視点で語られる話は、一見、冷静で客観的ではありますが、読み進めるうちに、彼女の本性というか、狂気が明らかになっていきます。
しかしながら水無月の自信なさげな、卑屈なものの考え方には共感できる部分も多く、下手したら自分もそっちサイドに行っちゃうんじゃないか?という恐怖を感じます。
物語は最後、井口と水無月が2人でいる場面に戻ります。
ここで普通なら、視点も井口に戻るわけですが、この小説では、なぜか水無月視点のままです。
これがすごくよくできていて、ここで読者は、
「根本は何も解決していない!」
「水無月は実は何も変わっていないのでは‥!?」
という事実に驚愕するわけです。
ありそうで、実はそんな無かった手法だと思います。
というわけで、最後は凄いな思った言い回し。
いつも私は私に負かされる。きっとまた痛い目にあうのに何故行くの、と夜のガラスに映った私が訴えていた。
私は顔に笑みを貼りつけたまま、あとの三人がきゃんきゃん喋るのを聞いていた。
遠回しな表現が独特で面白いですね。
主人公が、自分で自分のことを客観視できている、と思っていることが伝わります。
今読んでもその衝撃は健在。
オススメです!