現在の貧富の差はどこで、どのように生まれたのか?『銃・病原菌・鉄』
以前からブログでも書いていたように読みたいなと思っていた本です。
この本は生物学者である筆者が研究のためにニューギニアに滞在していた時、現地の人物にこう質問された場面から始まります。
あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?
そして、この問いを筆者はこう言い換えます。
なぜ、人類社会の歴史は、それぞれの大陸によってかくも異なる経路をたどって発展したのだろうか?
と。
その大きな要因とされているのが、食糧生産です。狩猟・採集から、植物の栽培・家畜の飼育へと速やかに移行できた人々がスタートダッシュを切ることができたと。
そしてこれは、植物の栽培、家畜の生産が出来る環境にあったか、そうでないかだけで、可能な地域で自然発生的に登場したと。
つまり、人種は関係ないということですね。
日本人には、人種差別的な意識があまりないですが、当時欧米ではまだ、白人が優秀であるという意識があり、そういった思想に一石を投じるかたちになりました。
この食糧生産という一歩の差が、大きなものとなっていきます。より多くの人々が暮らせるようになり、ムラのようなものができる。これによって、分業体制が確立され、さらに生産効率が上がっていく。
そして、タイトルのもある、鉄器、さらには銃の発明へと繋がっていくわけです。
個人的には病原菌の話が興味深かったです。
スペインがインカ帝国に勝利することができたのはなぜか?
銃や鉄製の武器をスペイン人は持っていましたが、それだけではさすがにキツい。
もっと大きな要因は病原菌であったと筆者は述べます。
インカ帝国では家畜は殆ど行われていなかったが、ヨーロッパでは、牛や馬などを家畜化していた。すると、それらの動物が持つ病気に対して免疫ができる。代表的なのは天然痘ですね。そして、スペイン人がインカ帝国に上陸したとき、天然痘の菌も上陸し、免疫を持たない先住民は王を含め次々と命を落とした。
これが勝敗を分けた決定的な要因だそうです。
このように、筆者は様々な時代の、様々な地域(日本が事例に挙がることもあります)を研究し、冒頭の謎を解き明かしていきます。
この本のいいところは、各章ごとに、「まとめると次のようになる」といった具合に要約が入るので、内容は決して簡単ではないですが、なんとなくでも理解しやすいところです。
まああまり細かく書いてもきりがないので、本筋とは少しずれますが、個人的に面白かった部分をいくつか。
13章では発明について触れていますが、そのなかで筆者はこう述べています。
技術は、非凡な天才がいたおかげで突如出現するものではなく、累積的に進歩し完成するものである。また、技術は、必要に応じて発明されるのではなく、発明されたあとに用途が見いだされることが多い。
長い人類の歴史で見れば、エジソンみたいな例はまれなんですね。
誘導電流を発見したことで有名なファラデーが、「貴方の研究は何の役に立つのか?と質問され、
「では、生まれたばかりの子供が一体何の役に立つのか?」
と答えたエピソードを思い出しました。
名言ですな。
もう1つ。
考古学に、言語学が役に立つという話。
はぇ~と思ったんですが、とりあえず説明が難しいので引用すると
言語学者は、同じ意味を持つ単語の語形が、現在使われているさまざまな言語でどのような形になっているかを比較し、それらの言語の祖語(プロト言語)の語形を推定する。彼らはこの方法によって、はるか昔の時代に祖語を使っていた人びとが、本当に豚を飼っていたのかを判断するのである。
例えば、6000年前のインド=ヨーロッパ語の祖語には「羊」を意味する単語があったそうです。このことから、6000年前インド=ヨーロッパ語の祖語を話していた人びとは、羊を飼っていたと推測できるのだそうです。
すごいですね!!
こんな感じで、面白い話もいっぱい載っており、ボリュームはありますが、割と読めちゃうと思います。
筆者の他の著書も読みたくなりました。
↑これとか(笑)