数寄者の生き様と死に様『へうげもの』
数寄‥風流の道、特に茶の湯などを好むこと
ひょうげ‥ふざけおどること。またその人。
(広辞苑第5版)
戦国時代に茶道をはじめ文化人として活躍した古田織部を主人公にした漫画です。
古田織部はまあ有名な人物ですが、戦国時代では脇役です。ただそんな人物目線だからこその面白さがあります。
漫画で描かれるのは、派手な合戦ではありません。武人として出世することより、茶器を収集することに命を懸ける俗物の物語です。
この作者の絵は上手ではないですが、見せ方は面白いですね。デカスロンのときもそう思いましたが。
地味な茶会の場面も、勢いがある、独特の構図で見ていて飽きません。シリアスなシーンももちろんありますが、ギャグのシーンはとにかくぶっとんでいます。常人の発想ではないです。
本能寺の変や、千利休の死。諸説あるところではありますが、作者独自の解釈で突き進んでいきます。そして大坂の陣。
歴史漫画っていうのは、結末はわかってるんですよね。古田織部が目指した豊臣家と徳川家の友好はなしえず、織部自身が夏の陣で処刑されることもわかっています。
そのどう足掻いても変えることができない未来にゆっくり進んでいく20巻以降はなんともいえず切ない気分でした。
ラストは織部の切腹シーン。稀代の数寄者、古田織部の死のざまは。笑えるけど、泣ける。
というわけで好きなシーン
民衆は余計なことはせず、馬鹿のほうが統治しやすいと考え、文化的なものを排除していく家康に対して、織部が言ったセリフ
「面白いと思う気持ちは‥
人を人たらしめておるもの‥
それをなくしてしまえば‥
人は‥
民は‥
何で生きておるのかわからのうなり申す
日ノ本は 人形だらけの死に体と化しましょうぞ」
やっぱり笑いって大事ですね!