陽の当たる道を目指す

過去の体験談とか趣味の話をつらつら書いてきます。本の話がやや多めかも。暇つぶしくらいにはなれるように頑張ります



自分がいかに騙されているかを痛感『反社会学講座』

ユーモアを交えながら、社会学に対して痛烈な批判をしている本です。

 

 

反社会学講座 (ちくま文庫)

反社会学講座 (ちくま文庫)

 

 

筆者は冒頭で、

若者の会話を耳にしたとき、「言葉の用法が変わってきているなあ」とおもしろがるのが言語学者。「言葉遣いが乱れている、けしからん」と怒るのが国語学者です。言語学では「正しい日本語」なるものは存在しません。日本語が乱れている、と嘆いたり憤ったりしているのは、国語学者です。国語学には正解があり、それをみんなに押しつけます。社会学者も正しい社会のあり方を強要し、みんなから煙たがられます。

 とドサクサに国語学者もディスりながら、社会学者を批判します。

さらに、

社会に問題がないと、社会学は存在価値を失います。ですから社会学者は自分で問題を捏造し、それを分析、処方箋まで書いてしまうのです。

 と続きます。

なるほどなあと少し納得したところで、早速第1章であるデータを示します。

 

それがコレ

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 直撮りで見にくくて申し訳ないですが、平成の少年凶悪犯罪の件数です。社会学者はこのデータから、「少年犯罪が増えている!最近の若い者は‥」「やはりアニメやゲームの影響が‥」と問題を提起するわけですね。

 

ところでこのデータ、平成元年以前はどうなっているんでしょうね?

筆者が調べた結果がこちらです。

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昭和のほうが圧倒的に多い!!

これで平成の若者より昭和の若者のほうがヤバい奴が多かったということがわかりました。(そもそも少年の数が違うのでは?検挙されてないだけなのでは?という反論にもキッチリ答えています)

筆者はこのように、TVや雑誌で問題視されている事柄に疑問を呈していきます。

 

よく言われる、若者が読書をしなくなったから学力が低下したとか、日本人の男は軟弱で、イギリス人の男はジェントルマンなのか、といった疑問にも答えています。

 

『続・反社会学講座』も同じようなコンセプトです。統計や意識調査についての章が面白かったです。匿名の意識調査といえど、その信憑性は決して高くないという。

また、別の章では「くよくよ」という言葉がいつごろから使われるようになったのか調査しています。新聞や雑誌の見出し、小説などを調べてみると、1999年までは殆ど使われていなかったそうです。しかしこの年に、リチャード・カールソンという人の本が『小さなことにくよくよするな!』というタイトルで邦訳され、これがヒットしたことにより、爆発的に使われるようになったそうです。逆に言えば、それまで日本人はクヨクヨという感情が殆ど無かったわけなので、迷惑な話ともいえます。

そういえば、ひすいこたろうさんの『名言セラピー』という本に載っていたのですが、エスキモーはずっと氷の上で寝ていたけど、凍傷になることはなかった。現代になって、エスキモーの暮らしを調査した学者が、「そんなことしてたら凍傷になっちゃうよ?」と言われて、凍傷になるようになってしまったそうな。

 

 

コミック版 小さいことにくよくよするな!

コミック版 小さいことにくよくよするな!

 

 

 

3秒でハッピーになる 名言セラピー

3秒でハッピーになる 名言セラピー

 

 

 

自分もまだまだ情報弱者だなと痛感します。何か1つデータを出されて、今これが問題です!と言われれば、あーそうなのかーと思ってしまいますからね。

また、どのように調べたのか、どこのデータなのかも書いてあるので、すごく参考になります。クヨクヨがどれくらい使われたのか、調べる方法があるもんなんですね。ただ、筆者はネット以上に図書館の情報を多く引用しています。

これについて筆者はこう言っています。

まだまだネットには質・量ともに、図書館にとって代わるほどの情報はありません。ネットはたしかに、われわれの生活を便利にしてくれました。しかし、ネットが人類の「知」を深めたとは、私にはとうてい思えないんです。むしろ逆に、ネットで検索して手軽に入手できた真偽のアヤシい情報を、いとも簡単に信じてしまう人が、どんどん増えている気がしてなりません。

この本を読めば、確かにその通りだと納得します。

 

 

反社会学の不埒な研究報告

反社会学の不埒な研究報告

 

 続編もいっぱいの人気シリーズ。

ぜひ1度読んでみてくださいな。