陽の当たる道を目指す

過去の体験談とか趣味の話をつらつら書いてきます。本の話がやや多めかも。暇つぶしくらいにはなれるように頑張ります



あの名作が2倍面白く、必ずもう1度読みたくなる!謎とき『罪と罰』

主人公とヒロインが肉体交渉があったのかまでバッチリわかります!

ドストエフスキーの『罪と罰』について徹底的に研究し、解説した本。

これを読むと、ドストエフスキーってすごいな、どれだけ精巧に、いろいろ仕掛けているんだと思い、また、作者もよくここまで調べたなと感心します。

 

自分は当然ロシア語なんて全く読めないわけですが、訳ではわからない微妙なニュアンスの違いがけっこうあるんですね。

そのへんの解説が面白く、へぇーロシア語ってそうなんだーと思います。

 

まず登場人物の名前。

主人公の名前はロジオン・ロマーヌイッチ・ラスコーリニコフ

ロシア語でrは、pになり、イニシャルはp・p・pとなります。そして、これをひっくり返すと、666となり、これはヨハネの黙示録における、キリスト教の迫害者ネロ、あるいは、アンチクリスト、悪魔を表す数字となります。

こじつけじゃねーの?って感じもしますが、筆者は、当時の戸籍まで持ち出して、狙わないとできないこのイニシャルの稀少性を指摘しています。

 

さらに次の章では主人公の出身地について考察しています。

まあ、普通に読んでいれば、ラスコーリニコフのお母さんが地方から上京してくる場面があるし、地方出身なんだろうなあ、ってとこまでしかわかりません。

しかし、作者は登場人物が話す方言や、ラスコーリニコフの母親の「鉄道まではせいぜい90露里」という言葉から、当時の鉄道図を持ち出し候補を絞ります。

さらに、母親の手紙に大寺院(ソボール)という単語があることに注目し、ソボールが当時限られた大きな街にしかなかったことから、ソボールのある街を調べ、リャザン県のザライスクであると推測します。(ミコールカと同じですね)

 

こんな感じで、膨大な資料を参照しつつ、普通に日本語訳を読んだだけではわからない事実を次々に明らかにしています。

 

他に個人的に興味深かったのは2か所。

ポルフィーリィが主人公を殺人犯だと断定する場面で、ポルフィーリィは、「あなたは逃げませんよ」みたいなことを言う場面があります。自分も罪と罰はもちろん読んだことはありますが、なぜそう言い切れるのか、ここがよくわからなかった。でも筆者はこれにもしっかり答えを出してくれています。

もう1つは、結局ラスコーリニコフとソーニャに肉体交渉はあったのかどうかです!!

もちろん本文で直接の描写はないですが、ここでもさまざまな描写や言葉選びから、推測を重ねていきます。

筆者の結論は『あった』です。

読めば納得というか、意外とわかるもんだなという感想です。

というか自分はソーニャという人物像についてだいぶ印象が変わりました。

 

 

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)

 

 

帯にあるように、間違いなく罪と罰をもう1度読みたくなります。

しかし、この1冊を書き上げるのにどれだけの労力と時間をかけたのだろうか。それを1400円程度で読めるとはいい時代ですね。

 

 

 

 ↑罪と罰の世界を現在の日本で再現させた漫画です。

謎解き罪と罰も大いに参考しているようで、主人公の名前は弥勒(ミロク)くん。

666、6が3つでミロクです。

ギャグみたいな紹介になっていまいましたが、内容はシリアスです。

また、罪と罰を現代日本で再現させるという難しい試みに、概ね成功していると思います。