『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』
以前、『銃・病原菌・鉄』を読んで、この筆者の本をもっと読んでみたいなと思っていたので、
今回タイトルに惹かれてこの本をチョイスしてみました。
そもそも人間の性は奇妙なのか?という話ですが、
他の生物に目を向けた時、人間のように一夫一妻制を基本とするのは極めて稀だそうです。
1番多いのは一夫多妻というか、オスが多くのメスと交尾をするという方法ですが、
逆に多夫一妻制というのもあるそうです。
生物がどの方法を選択するかは、子孫を残すために最も効率的な方法です。
例えば、マダラヒタキという生物は、一夫多妻制ですが、
オスは第一夫人の子どもの元には頻繫にエサを運ぶが、
第二夫人の元にはあまり運ばず、第二夫人は自らエサを集めてくることになるそうです。
にも関わらず、メスはなぜ第二夫人の座に甘んじるのか?
それは、優れたオスの第二夫人のほうが、冴えないオスの第一夫人になるよりマシだという判断をしているからだそうです。
人間と同じですな。残酷だ。
ただ最近の研究では、オスに騙されているだけという説も有力だそうです。
どちらにせよひどい話だ。
こんな感じで、他の生物の性生活も語られます。これだけでも雑学としてすごく面白いですが、本題は第4章からですね。
ズバリ『セックスはなぜ楽しいか?』
まあ書いてあることはかなり真面目です。
興味深いのは、他の生物と違い、なぜ人間は排卵期が見た目でわからないか?
という疑問です。多くの説がありますが、有力なのは、「マイホームパパ説」と、「たくさんの父親説」だそうです。
「マイホームパパ説」は、夫が妻の排卵日がわからないので、毎日家にいることになり、これが夫婦にとって都合の良い形であるがゆえに、そう進化した、という説です。
もしあらかじめ妻が排卵日ではないとわかっていたら、夫はその日家にいても仕方がないと判断し、排卵している別の女性を探す、ということになってしまう。
それを防ぐために、排卵を隠すようになったと。
対して「たくさんの父親説」とは、子殺しを防ぐため、という説です。
多くの動物は、他のオスの縄張りに侵略した時、そこにいる子どもを殺してしまうそうです。これは、遺伝的に、自分ではない子どもを残しておいても利益がないからです。
しかしメスの排卵日がわからない場合、自分の子どもである可能性が残る場合があり、メスから見れば子供を守ることができる、というわけです。
まあ、今の社会にそのまま当てはまるわけではありませんが、進化の過程でこのように人間は排卵が隠されるようになっていったのではないか、ということです。
さらに読み進めると、筆者がどちらの説を推しているのかわかりますが、ここもまた面白いアプローチで驚きの連続でした。
正直性癖とかの話かなと思っていたので、少し思っていた内容とは違いましたが
、興味深い話題が、わかりやすく書かれていたので、とても面白かったです。
最後に本筋とはあまり関係ありませんが、個人的に感心したところを書きます。
人間の体はどれか1つの器官だけが急に悪くなるわけではなく、全てがほぼ同じスピードで機能が低下していく、という話題で、筆者はこんな例を挙げています。
ある日のこと、フォードは数人の従業員を廃車場に派遣し、廃車となったT型フォードの部品を調べさせた。
帰ってきた従業員たちががっかりした表情で、ほぼ全部品がだめになっていたと報告した。ただキングピンだけは、ほとんど消耗していなかったという。
従業員たちが驚いたことに、フォードは彼の丈夫なキングピンを誇りとするどころか、
キングピンは上等すぎるようだから、将来的にはもっと安くつくるべきだと宣言した。
1流の経営者はすげーな!