ロシア文学史上最大?の問題作『イワン・デニーソヴィチの一日』
ロシアの作家・ソルジェニーツィンのデビュー作。
無実の罪で捕えられたイワン・デニーソヴィチ・シューホフの、ラーゲルといわれる強制収用所での1日を書いた作品です。
以前、同じくシベリアの流刑地を舞台とした、ドストエフスキーの「死の家の記録」という小説を読んだことがあったのですが、その重苦しく、陰鬱な雰囲気とは対照的に、シューホフはどこか楽観的な印象を受けます。
日々の労働が辛いことに間違いはないのでしょうが、今日の食事はなんだろうなあと考えながら、時に囚人仲間と雑談をかわし、1日の終わりに一服をするシューホフ。
何か特別なことがあった日ではなく、収容所の日常が淡々と描かれています。
そして、最後のページは
こんな日が、彼の刑期のはじめから終わりまでに、三千六百五十三日あった。閏年のために、三日のおまけがついたのだ……
という文章で締められます。
比較するようなことではないですが、いわゆる社畜として無機質に働く自分なんかより、よほどシューホフのほうが人間らしいのではないかとすら思ってしまいました。
この作品でソルジェニーツィンはノーベル文学賞を受賞しますが、国内では政治批判として迫害され、亡命を余儀なくされてしまいます。
これを読んだ限りでは、そんな批判してるか?という感じでしたが、当時のソ連の検閲がそれだけ厳しかったということなんでしょう。収容所の様子を書くこと自体がタブーだったのかもしれません。
それほど長くないし、読んでおいて損はない一冊だと思います。