8人の食い違う「告白」にあなたも絶対にだまされる『敗者の告白』
被害者と加害者。
真実は、当の本人たちがいちばんよく知っているにもかかわらず、
彼らはなにも知らない裁判官に結論を委ねるのです。
どちらかが嘘を吐いている―。
タイトルにあるように、この小説は、ある事件に関する、8人の人物の手紙や証言のみで成り立っています。
8つの主観で語られる話は、同じ事件、同じ人物のことを言っているとは思えないほど、食い違う箇所があります。
最後に弁護士が、とある人物へ宛てた手紙で、事件の経過を客観的に書いてはいますが、
これすらも、結局「主観」であり、どこまで信じていいのか、読者としても悩んでしまう、そんな構造になっています。
さて、作者の深木章子さんは元弁護士だそうです。
冒頭の言葉は作中の弁護士が言っていた言葉の引用ですが、もしかしたら、似たような経験をしていたんですかね?
弁護していた人が嘘をついていた、みたいな。
少し裁判に問題提起しているようなフシもあります。
ラストは、真犯人(と思われる人物)の
私は負けたのです。
という言葉で、幕を閉じますが、本当の敗者は一体誰だったんだろう‥
そんなことを考えてしまいました。